だるい話NEO

引っ越したらしく

街裏ぴんく独演会「漫談」を見に行ってきた

たまには、こう、感想みたいなものを書いてみようかなと思う。ゴリゴリにネタバレします、すんません。ところどころ抜け落ちているかも知れないけど覚えているだけでも。

 

11月4日座・高円寺にて街裏ぴんく独演会「漫談」を見てきた。地下にある大きなホールだった。

 

1本目は確か煙でできた鶴の話だった。のっけから街裏ワールド全開で高田馬場に色の濃い絵葉書を買うためにやってきたという話から始まる。そこに「便所に美しい鶴がいるから見てくれ」とおっさんが誘ってくる。単発で聞いたら「え?」なんだけどそれが連発することでいつの間にか「あぁそういう世界なのか」になってくる。予測不能という意味では最近TwitterのRTで回ってきた「ボーボボ読んでると今の世界がちっぽけな気がしてくる、それと同じことをシャブ中の人も言ってた」というツイートとシンクロするような気がする。そういう中毒性が街裏の漫談にはあるんだなと思う。

 

2本目はコント風だった。呼び込みライブの呼び込みをしていたら女性から「何か面白いことをやって」と弄られて漫談をやる…という展開だった。漫談の内容は泥水の色がコーヒーミルクの色と似ているという話だった。こう書くとなんかあるある話みたいになってしまったけどそこから斜め上に行く展開だった。雨の日道を歩いていた街裏が泥水の色がコーヒーミルクの色に似ていることを発見しそれを工事現場の建設作業員に話すという風に話が進んでいったのだ。雨、泥水、工事現場、建設作業員までは普通の光景なのにそこから非日常の話へと移行させていくところが街裏の観察力・想像力のすごさだと思った。

 

確かこの間にOP映像が流れて過去の漫談のテーマになったものの映像が流れていた。全部を見たことがないのでこの画像はこの話だなというのを全部の元ネタが分からなかったが生クリームとか刀の話は聞いたことがあったのでこの画像はそういう意味なんだなという面白さがあった。

 

3本目は長谷川京子とうま鬼(うまき)の話だった。街裏の話には時折ファンタジックな人や生命体が出てくる。愛女とか性満鬼とか嫌いな奴の背骨を折る小さな女とか。そういったのを名前だけいきなりポンと出してくる。当然見ている側からすれば「え?」となる。それを徐々に肉付けしていく、大きさはこれくらいでとか何々ができるとか。その肉付けの説明のワードセンスがすごく上手い。言葉の一つ一つは「?」だけどそれが組み合わさって笑いになる流れはジグソーパズルが完成されていく楽しさに似ている。

 

4本目は長尺だった。女教官ふたばという話だった。この話は落語の人情噺のような要素もあった。でも落語の人情噺とは違うところもあった。それは笑いと感動が半々で構成されていたことだった。落語の人情噺だったら本題に入ったら終わるまで感動路線で…という流れが多いような気がする*1始めの方に教習所の話が出てきてどうしても街裏が踏切一時停止ができないという流れがあってそれを励ましたのが前述のふたばだったという話だった。教習所におやつ部屋があってでかい水槽をかち割って味のしない青いゼリーを食べるという街裏ワールドも面白かった。

 

そして月日は流れ街裏は浮間舟渡の回転焼き屋で働き始める。街裏は真面目に働いているのに後輩店員は使えない店員ばかりでついに街裏は店長に対してなんで使えない奴ばかりを雇うのかとキレてしまう。そして店長は「可愛いからだ」と理不尽な返しをして街裏は退職を決意する。その使えない奴の一人に七夕の日にしか来ない店員というのがいてそれが特に印象的だった。そして挙句の果てに店長は「君は仕事はできるけど可愛げがないから常連もいない」とトドメを刺す。そして浮間舟渡を去る間際に一人の老人に街裏が回転焼き屋をやめることを伝えたらその老人は「君の常連だ」と答えて…サゲに入った。*2

 

長尺途中ないし長尺と長尺の間に平成犬物語バウの話もあった。自分も小学生の頃アニメを見た記憶はある。どんな話かはもうだいぶ薄れつつあるが。そのバウの中で主人公の女の子の父親が漫才大会で優勝したいために振り向きツッコミをひたすら練習するという話だった。実際にありそうでなさそうなそんな不思議な感覚になった。

 

独演会の最後に街裏は落語家は噺に入る前にマクラを話す、そのマクラは漫談的なものもありそれを昇華させていきたいと語っていた。

 

ピン芸といっても色々あるが漫談というのは実はその中でも難しいんじゃないかなと最近思えてきた。

 

一人コントだったら小道具や衣装の力を借りることができるだろう

フリップネタだったら絵の力を借りることができるだろう

リズムネタだったら曲の力を借りることができるだろう

モノマネだったら題材の力を借りることができるだろう

 

でも漫談はそういう何かの力を借りれない、借りるものが少ない表現力とワードセンスのガチンコ勝負だなと。ピン芸の中でもそんなジャンルを選んだ街裏はなんかこう、硬派だなと思う。

 

正直街裏の漫談を見るまでは漫談というのは5,60くらいのおじさんが世相をぼやく昔の世相漫談のイメージしかなかった。しかし街裏の漫談をはじめて見た時はこういうスタイルの漫談もあるのかと衝撃を受けた。むしろ創作落語に近いような感じもする。

 

そんな街裏ぴんくの漫談がこれからどうなっていくのかまた漫談を見に行きたい、そう思えるような楽しいライブだった。

 

 

 

 

 

*1:中には井戸の茶碗みたいにちょくちょく笑いを挟むものもあるけれど

*2:創作落語の人情噺というのは黒門亭で古今亭菊千代師匠の与太郎が耳の不自由な女性に恋をするという「手は口ほどに物を言う」という噺を聞いたことはあったがそれとは違う心の温まり方だった