だるい話NEO

引っ越したらしく

スールヤヴァルマン

街裏ぴんく独演会「こいつ実は」を見た感想について。以下ネタバレ注意

 

 

 

・夢オチ道場

 

街裏の両親が夢オチ道場という変な道場で出会っていたという話だったがよもやこの話が最後の方で役割があったとは思わなかった。

 

 

・食堂

 

話は小平界隈の食堂に入ったというところから始まる。食堂は個人が経営していてどことなく懐かしさもある、そういう語りだったと思う。この部分で孤独のグルメに出てくるような飲食店を自分は想像した。

 

街裏の漫談の特徴として嘘の要素がある。普通の漫談、世間一般の人が想像する漫談は綾小路きみまろ的なものであり世相漫談と呼ばれるものだったりする。つまり事実を弄るのである。

 

それに対して街裏の漫談はフィクションであり街裏が脳内で生み出した登場人物たちが漫談の中でおかしなことをやっていく、それを言葉だけ聞いて客の頭の想像力で描いて笑いにする、その形は落語にも似ているような感じがありそこが面白い部分でもある。

 

そして街裏の漫談の嘘を見せるタイミングは大きく分けて2つあると個人的にはそう思っている。1つ目が早い段階で嘘と分からせるものである。例えば性満鬼あたりがこれに当てはまると思う。2つ目は1つ目とは逆で遅効性のものである。例えばアッコにおまかせやアンパンマントルコアイスマンが出てきた話あたりがこれに当てはまると思う。最初は「ありそう」「あるかも」を漂わせるのがミソであり「人は名前は知っているけどそこまで○○を詳しく真面目に見ていない」を上手く突いているのも特徴だろう。

 

話を本題に戻すと食堂の話はどちらかと言えば早い段階で嘘を分からせていた。入店していきなり通常のものより4,5倍の大きさがあるセキセイインコがいて奇っ怪な単語を発するという先制パンチがあった。小さな欲を言えばデカいセキセイインコのところは大きさをセンチメートルを用いて伝え、他の物体で例えてもよかったのかなとも思った。

 

話はその食堂がどれだけ変わっているかに進んでいき3Dないしホログラムのバーチャルなサクラが食事、もといエア食事をしていたという展開があってそこがシュールで面白かった。

 

 

・ロバ殴り

 

食堂同様妙にリアルな地名を出すが早い段階で「ロバ殴り」というおもしろ嘘ワードが飛び出してくる。

 

ロバ殴りのバイト先は秘密倶楽部のような場所でベタな赤外線の赤い線がある、認証されると英語の音声が流れるなど細かい描写を伝えて見る者の想像力をかき立たせるそういう小さなところも面白かった。

 

ロバ殴りのバイト先のメンバーも設定がイカれていて(褒め言葉)そこも面白かった。意味不明なロバが害をもたらす理由を語りだす社長の婆さん、とにかくロバを痛めつける鬼畜な中年等ボケのラッシュをかけていく。

 

設定がイカれているのは何も人物だけではなくロバ殴りの会社の階級制度や昇進制度もどういう仕組みになっているのか謎なところを出してそこが笑いになっていた。オチの鬼畜な中年に反発する女子大生(?)が上の階級に出世するというどういう昇進制度なんだよという謎で、しかも口調も熱量持って話していたのが突然ふっと落とした声で締めたのがどことなく落語的でよかった。

 

 

石川啄木

 

プールで石川啄木に似た人物と意気投合するという話。

 

この話でキーポイントとなったのは石川啄木の「われ泣きぬれて蟹とたはむる」をうやむやにして言ったというところだろう。この部分で石川啄木似の人物が無理して石川啄木に合わせているのだろうと自分は想像してその光景のシュールさがおかしくて笑った。

 

話が進んで石川啄木は飛び込み台の最上部へ登って飛び込むというところがあったのだが登ってはいけない最上部に行かせない人、いわば監視員的な人の注意の手段がハープを弾いて注意するという奇想天外なものだったのが印象的だった。どうしたらそういう組み合わせが思い浮かぶんだと発想力にただただ驚いていた。

 

 

・黄レズ

 

この話は遅効性の嘘の話だった。最初は3億円事件の話から始まり街裏の祖母が3億円事件の記憶、そして3億円事件の模倣犯の話と展開していく。ここまでは「本当にありそう」が続いていく。

 

そしてメインの黄レズの前に1,2つジャブで変な模倣犯の話が入った。具体的にどんな模倣犯だったかは失念してしまったけれどいきなり黄レズという飛び抜けておかしいのを出して混乱させるのではなく「あれ?」と小さな違和感から始めていったのは上手いなと思った。

 

黄レズは自分の頭の中ではブルーマンの女版みたいなのがいて、肌の色が黄色で服は峰不二子みたいなぴっちりスーツでスーツも黄色といった人物だった。多分会場にいた客の人数分の黄レズが客の頭の中にいるのだろうと思ったら街裏は想像させる、頭を回転させる言葉を探す名手だなと思った。

 

 

・すのこ

 

これは漫談ではなくコントだった。

 

湯上がりのすのこが濡れることを嫌がる奇妙なまでに神経質な男を演じる街裏、その神経質さに対して街裏がどれだけ神経質なのかをケチャップとバターの紅白がまじることというわけの分からない例えで反論する白髪の男(センターうるし)のシュールな話だった。

 

これもまた後で分かる伏線だった。分かった時にぞわっとなった。

 

 

・ショート5連

 

できたら全部覚えていたかったが失念。覚えていたものだけ。

 

avex前編

 

街裏がavexでバイトをしていたという話から始まる。

 

その仕事の中でデモテープの合否を決めるという仕事があってその審査方法が奇妙だったという流れだった。具体的にはデモテープを聞く専用の部屋があって大量のカセットデッキを再生させ、その間街裏は全部の音楽を聞きながら縦横無尽に動き回るというものだった。

 

奇っ怪な動きをしながら全部の音楽を聞こうとする設定と街裏の動きがシュールだったが「複数の音声を聞く」というシチュエーションでこの漫談よりも前に「聖徳太子」を既に知っていたので「でもそれって聖徳太子だよね」と思ってしまった自分がいた。この場合は「いやそれまるで聖徳太子じゃん」と笑うのが正解だったのだろうか。考えもつかない展開ではなかったという意味では新しかったがどう反応するのが正解だったのかは結局自分の中では分からなかった。

 

avex後編

 

街裏のavexでバイト中に見かけた奇妙な光景の話。

 

大雑把に言ってしまったらavex浜田省吾浜田省吾らしからぬしょーもない歌詞の歌を歌っていたという話なのだが街裏の浜田省吾の真似が妙に似ていておかしかったのと浜田省吾という硬派ながavexという若者向けな会社でレコーディングしているという「んなわけあるか」というギャップが面白かった。

 

 

ジャワティ

 

これはホラー漫談という感じだった。

 

街裏が町中の変なものを探す会員というのはどことなく宝島社のVOWを連想させ、腕時計型の通信機でボスと交信しているという設定はNHK教育で平日の午前中にやっている小学生向けの社会科番組みたいだと思った。前述のavex前編と違うのは露骨にそれだと思ったのではなくなんとなくそれっぽいなと思ったことだろうか。個人的な感覚も入ってしまうけど。

 

街裏はインド人の友人ペティから「全ての階でおすすめがジャワティーというビルがある」という噂を聞きそのビルへ行く。そのビルでは全ての階層の店舗でジャワティーをすすめていたが自主的にというよりかは何らかのチカラで強制的にすすめているという描写があった。街裏の話し方で無理矢理ジャワティーをすすめてくる人は滑稽だったが片隅に「なぜこの人たちはジャワティーを強制的にすすめられているのだろうか」というちょっとした恐怖もあり不思議な感覚になったことを覚えている。

 

真相を探るべくビルの最上階へ到達した街裏。そこにはジャワティー教(?)みたいな宗教施設があった。そこにはジャワティー教の教祖とともにペティがいて…というオチだった。

 

 

・でっち上げ消防署

 

最初のところで「どうしても布団を被ったまま炒飯(料理名失念のため暫定的に炒飯とした)を作りたい」というのがあるあるの対極ないないのはずなのにその様子を想像してしまった自分がいてこれが言葉の持つ魔術かなどと思ってしまったのは覚えている。

 

その後火が燃え移って119番にかけたが30分しても一向に消防車は来ず結局自力で火を消して一命を取り留めた街裏、しかし火事の火は消えたが今度は怒りの火が消えなくなってしまった。

 

そして消防署へ文句を言いに行く街裏だったがここで消防署に対する復讐で素っ頓狂なことを言っていたような気がするが記憶がここで終わってしまった。早めに記憶をまとめておけばよかった(´・ω・`)

 

 

・すのこ(伏線回収編)

 

コントすのこの解説から始まる。すのこに出てきた人物は大学の同級生で街裏の人生に大きな影響を与えたキーパーソンだった、もちろん漫談上での嘘キーパーソンなんだけれど。この時過去の漫談に出てきた教習所の女教官なども出てきたのが印象的だった。

 

街裏はその大学の同級生の同級生に好意を持つようになった。この好意がどの程度の好意なのかは見た人次第といった感じの表現だったことを覚えている。もしかしたら見る人が見たらホモっ気なのかも知れない。そして街裏は彼の愛を確かめたくてすのこのことでキレたという流れだった。

 

そしてオチは最初の夢オチ道場とリンクさせて夢オチ関連のオチだったことまでは覚えているのだが詳細がまたしても失念…

 

 

・最後に

 

街裏の独演会はこれで2回目になる。今回も面白かった。何が特に面白かったか、個人的には「頭を使って笑った」ことが面白かった。確かに街裏は風貌こそ独特だが外見だけに依存していないと思う。

 

石川啄木の漫談で「石川啄木似の男が飛び込み台を登り、これ以上飛び込み台を登ってはいけないことをハープで注意する人」というのがあったが街裏が石川啄木をやっているわけでもないしハープを実際に弾いているわけではない。なんだったらこうやって文字に起こしたものを読んでみただけでは「え?」とさえなってしまう。

 

だが言葉の選び方、言い方が上手いから自分を含めた客はそのシチュエーションを容易に想像できるから笑いが起きる。これはやはり街裏が相当な技術があるからできることなんだろうと思った。

 

全てのピン芸人がそうであるというわけではないが最近のピン芸人は登場の、のっけからの段階で奇抜な格好をしてリズミカルな音楽や奇妙な動きで「なんかおかしい奴が出てきた」とすぐ分かる人も結構いるように思う。例えばサンシャイン池崎であったりひょっこりはんなんかがそうだろう。別にそれが悪いとは言わないもののそれは既成品をそのまま渡すような感じもあるといえばある。親切であるといえば親切でもあるけれど。

 

一方で街裏の漫談は街裏の言ったことを聞いて、それを頭の中で想像して、想像したもので笑うというまどろっこしささえあるようなやり方を取っている。だがそれはパートワーク誌の模型のような、自分で作り上げる楽しみがあってそれが醍醐味なのかなとも思う。しかもそれは普通の模型ではなくて1週目は恐竜のしっぽ、2週目はスナイパーライフルみたいなめちゃくちゃなパーツが届くというハチャメチャもある。

 

最後になるが自分のスタイルを貫き回遊魚のように止まらず力強く進み続ける、そんな街裏の漫談を今後も見ていきたいと思った。